ママが好き？　「うん、好きだよ」

お利口にしてた？　「うん、してたよ」

小さい女の子は泣きながらそう言う

母親は眉を吊り上げて彼女を叱る

あなたはほんとに嘘つきね


あべこべ少女が言葉を知って　小さい頃には毎日叱られ

それでも寂しい思いを言えずに育ち　毎日逆の意味を言い続けた

ママは嫌いだよ　いつも私を見てくれない

私はとっても悪い子なのよ　

心でいくら呟いても　絶対伝わらないことを彼女はまだ知らない


これ知ってる？　「うん、知ってる」

これも知ってる？　「うん、知ってる」

少女は興味なさそうにそう言う

友達は冷めた目で彼女を見て舌を打つ

あなたはほんとに嘘つきね


あべこべ少女が他人を知って　嘘つき女と誰からも言われ

それでも気持ちを素直に言えず　毎日逆の意味を言い続けた

私は知らない　でもあなたも知らないでしょ

私だけが無知じゃないのよ

心でいくら呟いても　絶対伝わらないことを彼女はもう知っている




寂しい？　「全然」

悲しい？　「全然」

少女は俯いてそう言う

少年は困った顔で彼女を見て笑う

君はほんとに嘘つきだね


あべこべ少女が誰かを愛して　必死に気持ちを伝えたくて

それでも毎日逆の意味を言い続けた

寂しい寂しい　どうしてわからないの？

私はほんとに嘘つきなの

行かないでって言いたくて仕方ないのに

全然言葉がわからなくて胸が苦しい




「嫌い嫌い、君が大嫌い」

どんなに叫んでも伝わらない

言葉の意味がよくわからない

どうして言葉なんてものが存在するの？

どうして私の気持ちが伝わらないの？

心でいくら呟いても　絶対伝わらないことを彼女はまた忘れている


ママ　ほんとに　好きなんだよ

ほんとは　とっても　お利口なんだよ

ほんとに　なんでも　知ってるんだよ

ほんとは　とっても　寂しいんだよ

ほんとは　とっても　悲しいんだよ

ねえ　私は　嘘つきじゃないんだよ

ほんとに　君が　大好きなんだよ