山がある　川がある　綺麗な空気がここにある

だけど便利なものなどは　何一つとしてありはしない

買い物行くには山を下って　小一時間歩いて行っといで

暗くなったら道に気をつけて　出来れば早く帰っといで


店がある　車がある　便利なものがここにある

だけど綺麗なものなどは　何一つとしてありはしない

地面を見てればゴミが落ちてる　車の騒音五月蝿くて

夜になったら危ない連中　出来れば早く帰っといで


何かがあれば何かがなくて　不完全なこの御時勢

何はともあれ人にとっての便利は他に大迷惑

だからといって何もしなければ人はもう生きてはいけなくて

どうせいつかは壊れるんだ　そう言い訳して今壊す


金がある　家がある　生きてくものがここにある

だけど心底大好きだった　君はここにはもういない

誰も私を気にかけることなど　きっとずっともうなくて

黒い世界をただ一人で　彷徨い続けて死んでゆく


それでもこの世にお別れした後　君にそこで会えるならば

私は清々しい笑みを残して　疲れ果ててから逝ってやろう

何かがあれば　何かがなくて　どちらが不幸と聞かれれば

命があっても君がいない　そんな哀しみを答えるよ



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橙色に染まる部屋　それが合図と言わんばかりに　

カメラを片手に裸足で飛び出す

今までに幾度も見てきた　山の奥へと消える夕日


世界が歴史と呼ぶ時に　巻き込まれながら生きていた

犠牲となった人々が　僕らの平和を作り上げた

全く変わったこの道も　全く変わったこの景色も

知らない誰かが作ったもので　理由も何もまた知らない


変わることが大事といえば　変わらないことは美しい

僕が見てきたこの夕日も　昔と変わらずそこにあり

昔と変わらない色を届けて　あっという間に消えていく

不思議なものだと思うのは　今見ている一瞬の光景を

また別の時の人たちも　僕と同じように見ていたことで

同じものを見ているのに　あれは何色と聞かれたら

また別の場所の人たちは　僕とは違う色を答えることで

ただ大勢の人々の　感動はきっと同じだろう

変わらないものこそ美しい




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